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寝る前に鳥籠に入れて朝起きたら出してあげる。
そうすれば後は少年か母親が目の届く場所からいなくなる事は無かった。
三人で食べる朝食は前よりも素晴らしいように思えたし、シーニィにおやすみと告げて籠に戻すようになってから、母が涙に濡れたまま眠る事が少なくなった気がしていた。
家の外に出る事が出来ない少年にとって母が全てだった。
しかし、今は、母とシーニィと過ごす、この家のこの世界こそ素晴らしい世界だと思えた。
たった一つの小さな出会いが、少年の世界を何倍にも広げてくれたのだった。
素晴らしい世界はここにあったんだ。
朝食を終えると母は化粧を始める。
慣れた手つきではあるが、いつも丁寧に時間をかけていた。
「最初が肝心」
との事だった。
母は少年と夜を過ごす事を大切にしていた。
それにこの町では夜が危険な事も知っていた。
夜の方が稼げるのに、と大家に怒鳴られていた事もあったが、母は昼前には家を出て、夜になりしばらくすると帰って来る。
酒の臭いにまみれフラついていたし、母の仕事がどんなものなのかも分かっていた。
それは自分の為だと知っていた。
少年は誇らしかった。
ただ、時折、
「今日は大切なお客さんが来るから外で遊んできてね」
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