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「瞬夜には分からないと思うけど、お母さんは外国の人に憧れててね。ここでは日本人は人気で大切にされる。そんな話を信じて、本当に軽い気持ちで来たんだ」
と話してくれた。
そして、
「でもね、瞬夜。あんたが産まれてくれた事は本当に感謝してるの。こんなイケメンになってくれてね。あ、でも気をつけなさいよ。笑って近寄る大人には特にね。襲われちゃうんだから」
そう言って抱きしめてくれた。
けれど、少年が本当に怖かったのは、心無い暴力では無かった。
時折いる傷ついた人々の姿だった。
時に、路上に、ゴミ箱に。
飢えて痩せ、頬はこけ、あばら骨を浮かせた自分の体を寂しそうに見つめる人。
時折、無くした右腕を探し続けているかのように、ゴミ捨て場を漁る人。
一番恐ろしかったのは、狂ってしまっているのか、何本か指を失った血まみれの手で自分の頭髪を少しずつ引き抜きながら、眼球が滑落し体の中が見えてしまった、その場所から、じっと少年を見つめてくる彼女だった。
決して治安が良く無い町。
母がこんな姿になって帰って来てしまったら。
考えたくも無い話だった。
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