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わるいおばあさん
あるところに、大きなお庭のある一軒家に一人で住んでいるおばあさんがいました。
腰が大きく曲がってはいますが、とっても元気。杖も使わないし猫がビックリするような早さで町内を走り回ったりも出来ます。
けれど、近所の人はおばあさんの事を「わるいおばあさん」と口を揃えて言います。
「また、わるいおばあさんがやったのね」
「全く、仕方ないなぁ、あのわるいおばあさんは」
ある時は自転車のかご一杯に石を詰め込んだり、
ある時は車の上に魚を置いて焼いてみたり、
魚屋さんの前に大きな犬の置物をおいたり、いつもいつも、回りの人がビックリするようなことをやって、大笑いで言うのです。
「どうだ?わるいだろー?」
そんなわるいおばあさんですが、近所の人からは人気者で、おばあさんの大きなお庭の草むしりや、遠くのスーパーにいくときに車に乗せてあげたりと、おばあさんのお手伝いをしてくれます。
どうして、わるいおばあさんなのに回りの人はおばあさんに優しくするのでしょう?
それは、おばあさんが本当にわるいおばあさんではないからです。
駐輪禁止と書いている場所に自転車を停めるから、
「持っていかれちゃ困るだろう」
と籠一杯の石をいれ、自転車の持ち主が戻るとその重たい自転車を引きずりながら持って帰るので、
「こんなイタズラをされるなら、もうここには停めないぞ!」
と決心してしまいます。
車の上に魚を置くのも、細い道に車を止め他の人が通れなくなっていたからです。
「夏場の暑い日にゃ、車のボンネットは大きなフライパンじゃ」
げらげらと笑いながら焼けた魚をのら猫たちに食べさせて、
のら猫たちにイタズラをされていた魚屋さんには大きな番犬をと犬の置物を。
「いやー、怖すぎて猫も尻尾巻いてにげだすんでい!」
なにかを“された方”からすれば、わるいおばあさんですが、
そのおばあさんのお陰で助かる人はたくさんいます。
だから、わるいおばあさんはみんなに愛されているのです
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