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それはコノハナサクヤヒメとイワナガヒメがまだ生前若かった頃の話だ。コノハナサクヤヒメは、若く美しい神様として成長した。その美しさに恋に落ちたのが、ニニギノミコトという神様だった。コノハナサクヤヒメのお父さんも、それならと婚約を勧め、さらにニニギノミコトを好青年だと気に入ってしまった。サクヤヒメのお父さんは彼に、サクヤヒメだけではなく、イワナガヒメも嫁にやろうと考えた。そして結婚式当日、サクヤヒメは多くの財宝を父から持たされ、イワナガヒメと共にニニギノミコトの元へ向かった。
一方ニニギノミコトは期待に胸を膨らませ、二人が来るのは今か今かと待っていた。
(コノハナサクヤヒメのお姉さまということは、きっとコノハナサクヤヒメ以上の美人に違いない。美人を二人も嫁にできるなんて俺は運がいいな…)
そうほくそ笑んでいたニニギノミコトの元に、ようやくコノハナサクヤヒメ達二人がそれぞれ素晴らしい着物に身を包み、到着した。
「ニニギノミコトさま、こちらが私のお姉さまのイワナガヒメでございます」
コノハナサクヤヒメがそう言い、扉の向こうから一緒に来たイワナガヒメが姿を現した。ニニギノミコトはどれだけの美人が嫁に来るのだろうとわくわくしていたが、彼以上にイワナガヒメの方が、まさか自分に結婚の話が来るなんて、と天にも昇る気持ちでいた。
「よろしくお願い致します」
イワナガヒメがそう言い扉の向こうから顔を出すと、その顔を見たニニギノミコトは言葉を失った。イワナガヒメは『磐長姫』と書くように、岩のように顔が長く、お世辞にも美人とは言えない顔であったからだった。
「えっと……あなたがイワナガヒメ、ですか?」
聞きにくそうに尋ねるニニギノミコトに対し、イワナガヒメは恥じらいつつもこくりと頷いた。するとニニギノミコトは態度を一変させ、こうイワナガヒメに言い放った。
「コノハナサクヤヒメさまはお嫁さんにもらうと言いましたが、イワナガヒメさんはお嫁にもらうなどとは一言も口にしてませんが。すみませんが、今すぐお引き取り頂いてよろしいですか?」
この言葉にイワナガヒメは相当のショックを受け、コノハナサクヤヒメが止める間もなくその場を走り去り、彼女はその後ニニギノミコトを恨みに思い、何年も何年も呪い続けた。
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