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第一章 タクシー運転手 本城雅人
空港から一人の女が姿を現した。
年の頃は、二十代の後半か、純白のドレスに身を包んだ美しい女であった。
「へい、タクシー」
女は道路脇に身を乗り出して大声で叫んだ。
その呼び掛けに気付いたのか一台のタクシーが女に近づいて来た。
「いただき」
一台のバイクが女の横を猛スピードで駆け抜け、その反動で女は転倒した。
「お客さん、大丈夫ですか」
本城雅人はタクシーから降りると女を抱き上げた。
「ひったくりだな」
雅人は、走り去ったバイクの方を睨んだ。
「ともかく、病院だ」
女をタクシーに乗せると雅人は病院に向かった。
「ご主人、安心してください、奥様の体に異常はありません。ただ・・・」
「ただ、どうしたというのです」
「奥様は記憶喪失のようです」
先程あったばかりの女性を妻と間違われて戸惑ったが、記憶喪失とあっては致し方ない。雅人は、しばらくの間、女の面倒を見ることにした。
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