第二章

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 「班長、ちょ、ちょっ!」俺は思わず叫んだ。操縦席の班長がいきなりフルスロットルで、乱戦のど真ん中に突っ込んでいく。「行くぞ、ボンタ!撃ちまくれ!」言われなくてもそうでもしなきゃ生き残れない。俺は声にならない悲鳴を上げながら、目に止まった敵円盤に片っ端から攻撃を加えて行った。  ところがなんと、班長はこの状況だと言うのに楽しげに笑っているではないか。かつて地球防衛隊のエースパイロットの名を欲しいままにしたのは伊達じゃないってことか。  元々機動性に優れている訳でもない支援戦闘航空メカに過ぎないフライヤーなのだが、高木班長の手にかかると、まるで藪の中を軽々と走り抜ける小動物も顔負けだ。同乗させられている方にとっては堪ったものではないが、俺はとにかく目の前の敵だけに集中していたので、酔いを感じる暇も無い…どころか班長に釣られて徐々に自分もハイテンションになって行くのが解る。  そしてその勢いのままに、俺はイーグルフライヤーに背後から迫る一機の敵円盤を叩き落としてやった。「サンキュー!」インカムにイーグルのサキ隊員の声が響く。  「全機離脱せよ。これより後方から挟み撃ちにする。」次いで、カジタニ副隊長の冷静な声が響く。華麗にターンを決めたフライヤーから、ちらりと巨大な宇宙戦艦の姿が見えた。あのドラコニア号である。が、心を奪われている暇はない。終幕が近づいているとは言え、まだ戦闘は終わって居ないのだ。     
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