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女官からの報告にヒミカは絶句した。
(ギズが?一体、どうして…)
ヒミカは青ざめ震える体に耐えながらも、ギズの元へ走った。
広場では、黒の騎士団が列をなし今にも出立する勢いだ。
その中心にいるのは、大切な妹とセツがいる。
「ぎ、ギズ!」叫びながら私は必死に歩み寄った。
「ヒミカ様だ!ヒミカ様が我らに英気を養ってくださるぞ!」
「ヒミカ様!我らに癒しのご加護を!」
兵士達が、ワァワァと叫びたてているが、今はそれどころではない。
「ギズ!ギズ貴方、いったい…」
振り返ったギズを見てまた私は絶句してしまった。
「姉さん、後から神殿に伺おうと思ってたのに…祈祷は終わったの?」
全く悪びれる素振りもなくギズは美しく笑うが、その姿は、美女というよりも中性に近く冷酷かつ妖艶でおびただしい魔力をまとった騎士だ。
美しい髪はバッサリと切られ自然と涙が溢れてくる。
私の涙に気づいたのか、ばつが悪そうにギズは一つ咳払いをして
「あーそのちょっと、みんなとお父様を捜しに行ってくるわ。姉さんは何も心配しないで大丈夫。叔父様も理解してくれたから…」
それよりもと、ギズは兵士たちに向けて言った。
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