竜を待つ人

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そうこうする内にワシ等の中に連中を狩るモンが出てきおった。お前さん達が “ドラゴンスレイヤー”と呼ぶ騎士様の事じゃよ。ワシ等の時分は 竜狩り(りゅうがり)とか竜守(りゅうもり)なんて呼び名もあったが、騎士様が 一般的じゃったな。 姿や性別も様々な人達じゃった。頑強な鎧と盾に身を包んでいる者もおった。逆に我等と 大差ない服装の者、若者に老人、女の騎士様もいたな。彼等に共通しているのは一つだけ。 それは巨大な剣じゃ。自身の身の丈より長く、太い大剣を持ち、それを棒切れのように 楽々と動かしておった。あれを喰らえば、巨大なドラゴンとて、人溜まりもないだろうて。 一体、何処から現れたかは知らん。 「ドラゴンが出たぞ!」 なんて話が上がると、何処からともなく現れる。そうして戦い、勝利する。 実際、あの方達の登場で、みるみる人間の被害が減っていった。ワシ等は拍手喝采、 正に英雄のように迎え、地面に横たわるドラゴンを肴に酒宴を開いたものじゃ。 あの肉は固くて臭いが、 くるみとワインを一杯にした樽にしばらく漬けると、柔らかく美味そうな風味を 出したもんだワイ。年寄りは気味悪がったが、若い奴にしてみれば、御馳走だったからな。 騎士様たちは食べなかったな。酒を薦められて飲む事あったが、口もほとんど聞かず、 戦いが終わった次の日には、姿を消していた。どのお方もそうだったが、何処か遠い所を 見ているような、寂しそうな目をしとったよ。 やがて、ドラゴンの数がめっきり減ってきてな。騎士様達を見かける事が無くなってきた。 その頃には、普通の人間達も奴等の倒し方を学んで、ドラゴンの固い皮膚を貫く大型の 石弓器械を用意したりして、町の防衛に当てた。 実際に空を飛ぶ連中を、ワシ等の背丈くらいの弓が貫くのを見たし、実際に操作もした。 皆、平和のために一生懸命だったよ。戦う相手が減っていったのも、大きな励みだったね。 そうやって、世の中が落ちついてきたところ…そう、あれは収穫が終わり、 寒い風が吹き始めた頃じゃったな。町の外れ、海と向こうの島、 今じゃ、跡地になっているが、立派な火山が見えた丘に1人の“女の騎士様”が 居座るようになったのさ…
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