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だから、ワシは声をかけた。緊張したし、怖いのは勿論じゃが、そんな事より、
何とかしてやらんとって気持ちが、先じゃったよ。あの人が立っている草原に足を踏み入れ、近くまで寄っていった。こっちの動きに、騎士様は気づいたらしく、少しこっちを見たよ。
澄んだ青い目じゃった。綺麗でいて、何処か、悲しそうな感じでな。それを見たら、余計に
心動かされてなぁ~、最初の言葉は確かそうだ。
「あの~、騎士様、俺達、町のモンですが、何か、御入り用でしたら、用意しますで。」
じゃった。
するとあの方、サーラは、少し首を動かして、考えるような仕草をした後、
“やっぱりいいや”
って言うみたいに、また、海の方を向いちまってなぁ~。あれには困った。
ピケティの奴なんか。
“そら、見た事か”
なんて顔をしやがるしな。全く、ほとほとに参ったよ。だが、そうなってくると、
色々世話を焼きたくなるのが、こっちの性分でね。
「とりあえず、俺達、時々ここ来ますし、このピケティは近くで畑やってますだ。
何かありましたら、声かけてくだせぇよ。」
って言ってさ。持ってきた食べ物を入れたバスケットを置いてった。
帰り際に、ピケティの野郎がすかさずせっついてきやがったな。
「だから、言ったやん?トマさんよぉ~、あの騎士様、サーラさんだっけ?
何もいらねぇんだよ。きっと!ますます怪しいぜ。それより、さっきの言葉本当かい?
“時々、会いに行くってさ。”俺、やだぜ。」
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