煩悶

11/12
648人が本棚に入れています
本棚に追加
/258ページ
「こういう時、日本だと痛いの痛いのとんでけー、って言うんだろ。どう治った?」 「やめろ、子供じゃあるまいし」 「治療だよ」 くすくす笑うタケルの態度に、ぶつけたのはわざとだったのではないかと勘繰る。 ゲームで手を離せないのをいいことに、ほとんどずっと額を付き合わせっぱなしで、むしろぶつからない方が不思議なぐらいだ。 「ほら、見てみなよスクリーン。タイムぶっちぎりだ」 「当然だ」  智は不遜な態度で答えると、終わったものに興味はないとばかりに立ち上がった。離れてもタケルの手の感触が残っていて、無性に恥ずかしい。 「待ってよ、帰るの?」 「一応全部見られたし、もう満足だ」 タケルがどんな顔をしているのか、どうしても見ることができず、智は振り返れなかった。
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!