空中楼閣スペースシアターの崩壊

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空中楼閣スペースシアターの崩壊

空中楼閣スペースシアターの崩壊 想像を絶する未来。地球から遥か離れた空間に劇場型スペースコロニーが完成した。複雑に絡み合う天体軌道の妥協点、ラグランジュポイントと呼ばれる場所は重力が安定していて巨大な人工都市の建築にうってつけだ。太陽光を受けてキラキラと輝く宇宙のトウモロコシ。実の一粒一粒が宝石のように彩られている。 それは21世紀のシネマコンプレックスのような劇場の集合体で、一つ一つの上演スペースが当時の東京ドーム五百個分ほどもある。 密閉されたドームの内部に舞台と観客席があり、ナノテクノロジーによってどんなに複雑な舞台や大道具でも瞬時かつ自由自在に建設できる。 たとえば、ローマ時代の城塞を再現しようとすれば内蔵された歴史データベースに基づいて本物のそれと寸分たがわぬ城が完成する。 そこでは俳優と観客は一体となって芝居を体験する。じゅうぶんなスペースがあるので、B52爆撃機が飛び交うベトナム戦争末期のサイゴンや東西軍がにらみ合う関ヶ原の戦場もそっくりまるごと再現できる。 舞台役者や演出家にとってまさに夢のような劇場だった。     
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