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この劇場でもっとも人気を集めている演目は「覇王といっしょ☆百兆年の遠征」という一大スペクタクルだ。主人公は伝説の英雄「覇王」。幾度となく転生を繰り返しありとあらゆる時代に名を遺した。そんな大人物が人類滅亡後の世界にふたたびよみがえり、歴史を一からやり直す。その過程で大勢の人々を次々と引き入れて時間から時間を旅するという物語だ。
演劇用語で第四の壁という言葉がある。舞台を取り囲む左右、天井の三つの壁に加えて、観客と舞台を仕切る透明な壁をイメージする。それが四番目の壁と呼ばれる。
「覇王といっしょ」は第四の壁を取り払う画期的な芝居だ。覇王が気に入った客を舞台にあげて、そのまま登場人物の一人として採用する。観客としては物語の一部になれるということで、大変な人気を博している。覇王のステージは観客や俳優で溢れかえり、もはや舞台と客席の境界が意味をなさない。それどころか楽屋エリアや連絡通路にまで人が溢れかえっている。
とにかく、この覇王を演じるキング・チョキチョキという男はカリスマ的存在で、幅広い層から愛されている。もはや教祖と呼んでも差し支えない。
経済大国の首都に匹敵する人数が集まるといろいろと面倒なことが起きる。しかし、覇王のメンバーはジブラルタルの一枚岩のように団結していた。
チョキチョキがもたらす莫大な利益は空中楼閣の減価償却を完遂させるどころか、一つの経済圏をなしていた。
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