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そんなわけで、覇王メンバーと他の劇団の間で生じる摩擦は、スペースシアターの劇場支配人もほとほと手を焼いていた。いくら彼らが劇場の収入面においてドル箱的な存在だからと言って何でも許されるわけでない。だいいち、観客が俳優になってしまっては商売あがったりだ。実際に支配人は数え切れないほど対策を試みた。一度など格闘技選手を集めて実力排除を試みた。ところが木乃伊取りが木乃伊になるというか、彼らは全員がそっくりそのまま配役として取り込まれてしまった。
スペースシアターはその立場上、国家権力の介入を嫌う。そのため強制力の行使には限界があった。そんなこともあって、チョキチョキ劇団の勢いはとどまるところを知らなかった。
もはや、演技なのか、本気なのか、あるいはリアルタイムで歴史が作られているのか誰にもわからない。
そして、今日も決して幕が下りることのないストーリーが語られている。右も左も見渡す限りの砂丘。遥かな後方を砂塵を巻き上げて竜巻が行く。
地平線まで続くラクダの列。老若男女がつき従っている。彼らは古代ローマの衣装や中世ヨーロッパの甲冑など時代も場所もまちまちな格好をしていた。
その先頭をとりわけ大柄な男が率いていた。黒鉄色の皮膚に隆々とした筋肉。数々の傷跡は気性の荒々しさを代弁している。
「我は覇王なり! 諸兄諸子、いざ出立!!」
彼が叫ぶと砂漠じゅうががどよめいた。
「「「サー・グレイテスト・キング、チョキチョッキー!!」」」
「覇王さまぁ?」
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