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―――――― 先月の学祭の日。後夜祭の時間に空き教室に呼び出されて、1日の楽しかった気持ちも相俟って浮足立って向かった先で聞かされた言葉は、私の心を暗転させるには十分すぎる程の威力を持っていた。 「――もう、俺に話しかけないで。・・・ごめんね」 突き放す言葉のはずなのに、その顔は悲しそうに歪められていて、何で先輩がそんな顔をするのって、訳がわからなかった。でも、そんな顔を見せられたら、何も言えるはずもなくて。 その日から、廊下ですれ違っても、目が合っても、先輩が以前までのように話しかけてくれることはなくなった。頭を撫でてくれることも、笑いかけてくれることも。 ああ、先輩は私のことが嫌いになったんだって。そう思って、必死に痛む心に蓋をしてきたのに。 「・・・優しくしないでください」 ――これ以上、先輩のこと、好きになりたくないんです。 そんな思いは飲み込んで、ぎゅっと掌を握りしめた。 先輩は、何も言わない。下を向いてしまった私には、今先輩がどんな顔をしているのかも分からない。 怒っているのだろうか。それとも、呆れてる?手当てまでしてくれたのに、勝手に八つ当たりのように言い募ったりして。
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