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いつもは校舎の裏に行くのに、先生を引っ張りながら初めて図書室へと直接向かう。
扉を開けると彼女はいつもの場所に座っている。
「ほら、先生の勘違いですよね?」
僕が聞きながら先生を見ると、目を見開いて彼女を見ていた。
「嘘だろ……なんで……」
「先生、お久しぶりです。そしてキミ……人に見せないでって言ったのに」
泣きそうな顔をしている先生と彼女。
「私を見てくれて、描いてくれて嬉しかった。けど先生に見つかっちゃったから、もう行かなきゃ。今まで仲良くしてくれてありがとう。先生も、お世話になりました」
そう言った彼女は段々と透けていき、最後はあぶくのように消えてしまった。
「……まるで泡沫の夢だな……」
先生が呟いたその瞬間、僕の初恋も水面に浮かぶ泡が破れたように、静かに終わりを告げた。
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