出会いたくなかった

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「おー、わかった。じゃあまたな、アルト」  電話を切ると、男は欠伸をしながら家に向かって歩いていた。  黄土の髪は風に靡き、宝石のようにも見える輝きを持つ緑の瞳、黒のシャツを着こなしている男は、レイラ=モンド=チェルゴと言って、レイモンドと呼ばれている。  レイモンドは家に帰ってテレビをつけ、のんびりしようとしたその時、何やら大きな音が聞こえてきた。  何事かと思い、外に出て確認しようとしたが、それよりも先に、その何かが自分の部屋に直撃する。  「・・・・・・」  驚くべきなのか、警察に連絡すべきなのか、自分の部屋を壊したことに対して文句を言うべきなのか、考えていた。  部屋に落ちてきたソレは、球体のようにもみえるが、時折、形を変えるようにして、ぐにょぐにょと変化する。  一体それが何なのか、レイモンドには分からないが、ぷしゅー、と静かな音が鳴ったかと思うと、その中から変な男が出てきた。  「あー・・・身体痛ェ」  「・・・・・・」  何やら文句を言いながら出てきたその男は、黄土の短髪に緑の目をしていた。  黒い服に身を包んでいる男の見た目、口調、出で立ち、声色、その全てが、まるで誰かに似ているようで。  ただじーっと男を見ていると、男はレイモンドに気付き、手をあげて「よ」と言ってきた。  「誰だ。てか、俺の部屋ちゃんと修理しろよな」  「ああ?んなこと言うなよ。俺とお前の仲じゃねえか」  「なんの仲でもねえから。さっさと出て行かねえと、警察呼ぶぞ」  「呼んでもいいけど、ちょっと俺と一緒に来てくれや。それからにしてくれ」  「自分勝手なこと言いやがって。何様だ」  「俺様だ」  「・・・・・・なんかムカつく」  「まあ、いいからいいから」  「親の顔が見てみたいもんだ。とにかくそこで大人しくしてろ。俺が制裁を与えてやるから」  「少しは部屋の掃除しておけよ。じゃないと、流行り病にかかっちまうぞ」  「うわ、余計なお世話ってまさにこのことだよな。人の家に勝手に来た挙句、文句まで言うなんて、最低極まりない」  「よく考えてみろ。この最低よりももっと最低なことなんて、人生に幾らでもあると思う。だから可愛らしいことでいちいち最低だとか言うのも止めておけ。お前のためだ」
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