何も出来ない同居人

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「おい。最後って何だよ?もう会えないみたいじゃないか」 「負けたら次は確実に消されるだろうし、勝っても神様の仕事しないといけないからね」  木嶋は悲しそうなカミサマの言葉に舌打ちする。 「ああわかったよ。一個願いを言ってやる。ずっとここにいて欲しい。俺と一緒に暮らしてほしい。たとえそれで世界が滅びようともな」  木嶋の言葉はカミサマにとって最も残酷な願いだった。  たとえ世界が滅んでも傍にいることを願う木嶋。反対にカミサマは自分がいなくても男に生きていて欲しいと願っていた。 「ギリギリまで粘っちゃったけどもう無理だよ。これ以上は私の力も崩壊に耐えるのにきつくなってきたし消費したら勝てるものも勝てなくなっちゃう」  木嶋はそんなカミサマの言葉を無視して、手を引っ張って自分の下に寄せ、抱きしめた。  ずっと人を守ってきたカミサマだが、こうして抱きしめられたのは初めてだった。  そうして最後の夜になった。  カーテンを閉めてどうても良い雑談に近い話を二人で沢山した。一緒に行った場所。一緒にふざけた場所。食事をした場所。だが、その思い出の場所は全て既に消滅しているが。  それでも、どうでも良い雑談が二人にはとても心地よく、そして楽しかった。  カミサマはそんな話をしながら木嶋のベットにごろんと転がりこっちをじっと見ていた。 「おい。何しているんだ?」  そんな言葉にカミサマは目を伏せるような仕草をする。それでも、こっちを見てはっきり言った。 「言わせたいの?」  その日、二人は初めて一緒に寝た。
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