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最後の日を終えて朝を迎えた。
カミサマは少し後悔した。
離れようと考えるだけで苦しくなる。今までは我慢が出来たが耐えられないほどに心が痛かった。
だが良いこともあった。誰かを守りたいという心だけで無く、誰かを愛するという心も持てた。
神という人ではない存在で、そんな感情まで理解出来た存在はほとんどいない。
それが嬉しく、そしてとても辛かった。
だが、確かに強くなった。今はただの争いの概念程度に負ける気はしない。
「じゃあ。行ってきます」
カミサマはそう言い残して空を飛んだ。木嶋は引きとめようと大声を出した。
もしここで、立ち止まらなかったら永遠に別れることになっていただろう。
もしここで、愛では無く、守りたいという気持ちの方が強くなっていても永遠に別れることになっていただろう。
カミサマは知らない。人という存在は、神から見たら非常に短い時間を、一生懸命生きるということを。
僅かな時間で、己の目的の為に全力で立ち向かう。それは、心から決めた目的があるときは手段を選ばないということでもあった。
「お前じゃなくても良いだろう!他に出来るやつがいるはずだ!」
その声が、遠くにいるカミサマに届いた。その言葉は、カミサマにとって想定外の一言だった。
本当の神様はたった一人しかなれない。だからこそ、神という存在になったら他人に頼るということをしなくなる。
神様を目指す者にとって考えもしない選択肢だ。だからこそ、その可能性は残っていた。
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