何も出来ない同居人

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 木嶋彰吾(キシマショウゴ)は自分のアパートの傍のゴミ捨て場の中に傷だらけでボロボロになった女性を見つけた。  長い金髪の女性。身長はそれほど高くなく、顔立ちはモデルというよりは小動物のような印象だった。  慌てて木嶋は彼女の傍に駆け寄った。 「おいあんた!大丈夫か!」  女性はこちらを空ろな目で見ていた。びっくりするほど空虚な目だった。何があったらこんな顔になるのかわからない。  ここで救急車を呼ぼうとスマホを取り出した。だがなぜか、指が動かず電話が出来なかった。  木嶋はスマホを仕舞って女性に話しかけた。 「あんた。何かして欲しいことはあるか?」  何故自分がそんな質問をしたのかわからない。ただ、目の前の空虚な存在が本当に消えてしまいそうだった為、何かしてやりたかった。 「食事をしてみたい」  木嶋は頷いた。 「いいぞ。立てるか?どこかに行くか?それとも俺の部屋に来るか?」  女性は空虚な瞳のまま木嶋を見た。見ているはずだが、何も見ていない。そんな瞳だ。 「あなたの部屋が良い。あまり人に見られたくない」  木嶋は女性の体に気づいた。怪我に気を取られていたがボロの布切れ一枚を纏っているだけだった。 「わかった。とりあえず俺の部屋に行こうか」  木嶋を立ち上がった女性の手を持ち自分のアパートに女性を招いた。女性はフラフラして体を壁にぶつけながらも、木嶋に付いていった。
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