何も出来ない同居人

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「お前が来て一年経ったな。帰らなくて良いのか?」  レースゲームを一緒にしながら木嶋はカミサマに尋ねた。 「んー。といっても帰る場所無いしなぁ」 「だよなぁ」  予想通りの答えに木嶋は困り果てた。  一年という歳月は以外と長く、レースゲームでも木嶋とカミサマは大体対等くらいの強さになっていた。 「どうしたの?何かあったの?」  カミサマの他人を心配するという行動に木嶋は驚いた。一年目なら絶対にこんな反応はしない。 「ああ。実は海外に転勤になってな」  どうしても断りきれなかった。今回は寮の単身赴任だから連れてくることが出来ない。  そして相手は家事は全滅のスーパーダメ人間。最低でも半年という期間放置したら干物になってしまいそうだった。 「ふーん。いってらっしゃい。私の方はなんとかするから気にしないでいいよ」  カミサマのその答えは予想外だった。暴れてじたばたするくらいは想定していたが。 「いや飯とかどうするんだよ?金なら何とか出せるけど、本気でメイドとか雇おうか考えるんだが」 「だいじょぶだいじょぶ。私食べなくても死なないし」  木嶋は意味がわからなかったが、他に選択肢が無い為、カミサマを残して転勤に行くしか無かった。  転勤先は未開の小国だった。治安は余りよくないから基本寮に缶詰だ。  だが自分のことより、カミサマが心配だった。未だに電話すら使えない。ドライヤーはかけてあげないといけない。かぐや姫も真っ青のお貴族様生活のカミサマが一人で生きていけるのか。
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