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花嫁は踏み切れない(ゼロス)
五月も末となり、六月は目前。
とある安息日、ゼロスは街の秘密基地にいた。そこでクラウルと、穏やかな時間を過ごしていたのだ。
「そろそろ昼だが、どこかに食べに行くか?」
「あぁ、そうですね。あっ、それならウルーラ通りも見ていいですか?」
「どうした?」
「来月の頭にランバートの誕生日があるので、プレゼントの見当を付けようかと思いまして」
彼は例に漏れず、今年も自分の誕生日を忘れている様子だ。まだ約束はしていないが、先に見ておくのはいいだろう。
クラウルも思いだしたようで、直ぐに頷いた。
「俺も今年は、もう少し真っ当な物を考えなければな」
「ちなみに、去年は何を贈ったのですか?」
「投げナイフ」
「……」
実用的と言えば実用的だ。実際ランバートは普段の装備として投げナイフを忍ばせている。なかなかの実力のはずだ。
だが、だからといって誕生日に渡す物でもないだろう。
「…では、今年は俺とクラウル様、二人の連名ということにしますか?」
「ん?」
「無骨な男二人でも、知恵を絞ればそれなりの物が見つかるかもしれませんよ」
ふっと笑ったゼロスに、クラウルも穏やかに微笑んで頷き、上着を持った。
まさに、その時だった。
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