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二番煎じ
さて、自分の社へ帰ってきた神様は、早速参詣人を物色しようと朝からわくわくしながら待っている。
ところが、待てど暮らせど猫の子一匹現れません。
「うーん、こうして改めて見ると何だね。ここは随分人気が無いんだねえ。まあ、わたしが無精をして、ろくすっぽ御利益を授けてこなかったのがいけないんだろうけれど。おまけに雨が降って来ちゃったよ。これじゃあ今日は望み薄かな――おっと、誰か来た!」
何も隠れなくたって良さそうなもんですが、慌てて社の中に引っ込みますと、駆けてきたのは道中合羽に三度笠、苦み走った三十がらみの、どう見たって旅から旅の渡世人が、ふらりと江戸へ立ち寄った、といった風体の男。
参拝をするどころか、いきなりお堂の中へ飛び込んで、
「いや参った参った。急に降って来やぁがった」
単なる雨宿りなので。
「それにしてもひどい社じゃねえか。賽銭箱の中に、蜘蛛の巣が張ってやがる。あれあれ、雨漏りしてるよ、雨宿りの甲斐が無いね――とぉ、先客がいたとは気付かなかった。汚ねえ爺ぃだねえ。お前さん、なんだか影が薄かぁねえか。大丈夫かい。お迎ぇが近いんじゃねえのか?」
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