尋ね人

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尋ね人

 そんなこんなで、男はとりたてて贅沢三昧を言うわけでもございませんで、腹が減ったらあれが食いたい、喉が渇けば茶ぁ()れてくんな。果ては、背中が痒いから掻いてくれ――なんてんで、神様はもう、すっかり男の付き人みたいな有様で。 「まったく、ありがてえね。お前さん、本当に福の神様だ。どうだい。あのぼろ社、立派に建て替えてやろうか。日光の東照宮もかくやってやつをさ」  どのみちそれは、神様に頼もうって腹なので。  慌てて神様は丁重に辞退をいたします。  お社を、自分で立派にしたって意味が無い。神様と申しますものは、祀る者があってこその神なので。祀る者がいなくなれば、通力は失せてしまうものなんでございますよ。  ところが神様、このところ近頃に無いほどすこぶる調子が良い。何しろ男が、朝な夕なに柏手を打ち、手を合わせてくれるもんですから、閑古鳥が鳴いていた頃とは大違いというわけなんです。
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