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「したが、その女子は今まさに、その方のことを待焦がれておるやも知れぬのじゃろ。見たところ、岡場所めいた所を尋ね歩いておるようじゃが、そういった所の女子は、寿命が短いとか申すからのう。早い方が良かろう」
「………………分かった。もし、本当におようと会えたら、願いはこれっきりにしてやるぜ。だから、気合いを入れて頼まあ。俺を、おようの所へ連れて行ってくれ」
「よしきた!」
たちまち男の体は光に包まれまして、びゅーんと飛んで参りましたところが――
「なんでぇ、これぁ」
「……あちゃぁ」
目の前には真新しい一本の卒塔婆。俗名よう、と記してあります。
「なんでぇ……なんでぇ、なんでぇ、なんでぇっ。やっぱりこの世には、神も仏もねえんじゃねえか!」
男は、卒塔婆の前で泣き崩れます。神様としても、こればっかりはどうしようもありません。
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