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身の上話
「ま、いいや。これというのも元はと言えば全部俺のせいだ。身から出た錆というもんだ。当たって済まなかったな」
「いや、いや――」
「俺はよ、生まれてすぐに捨てられたのよ。松の木の下に捨てられていたってんで、捨松なんて名ぁ付けられて寺で育ったが、こんなちっちぇえ時分から、牛馬のようにこき使われてさ。少し大きくなると今度は、生臭坊主どもが俺をおもちゃにしようとして来やがった。だから張っ倒して逃げ出して、だけど餓鬼が一人まともに生きていけるわけもねえから、いつしかこんなやくざな稼業に足を踏み入れたってわけだ。どうだ、神も仏もねえだろう」
「うむむ……」
「そんな時におように出会ったんだ。口減らしのため江戸へ売られていく筈だったんだが逃げ出して、雨の中、まるで仔うさぎみてえに震えていた。他人を守ってやらなけりゃあと思ったのは、それが初めてだった。
暫く一緒にいるうちに、次第に互いの心が通じ合って……一緒に江戸まで逃げて所帯を持とう。こんな稼業からは足を洗って働くからと、手に手を取り合って……
だが、旅の途中で路銀は尽きる、江戸で商売を始めるにしたって元手というものが要る。ほかに出来ることなどねえというのは言い訳だろうな。身に染みついた悪癖で、俺は一世一代の大博打を打って――負けたんだ。
と、言うより最初から罠だったんだろうな。博打はいかさまだったし、おようを追って来た女衒と土地のやくざは繋がっていて、俺は半死半生で放り出され、おようは掠われたんだ。
これも、定めってやつだろう。おりゃあ、もうここで坊主にでもなるぜ。今までありがとうよ」
「いや、しかし――」
お役御免となれば助かるはずですが、神様としても、こんな話まで聞かされちゃ、なんとも寝覚めが悪いんですな。しかも、それでは折角の唯一の信者を寺に取られてしまう。
そこへ――
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