最後の願い

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 自分たちが悪いのだからと、神頼みをすることも無く、とにかく身を粉にして働きづめに働いた喜八、お由布夫婦は、その甲斐あって一代で、曲がりなりにも表通りに店を構えられるまでになりました。  そこへ、諦めていた我が子が目の前に現れ、しかも、神様から授かったと思っていた赤子が、実は血を分けた孫だということが分かったのですから大変です。  色々恨みに思うこともあるだろうが、この上は決して不自由はさせない。どうか戻って来ておくれと縋り付かれまして捨松も、一切を水に流し、神様とも約束を致しました通り、三好屋で真面目に働くようになりました。  還俗をしたおようと夫婦(みょうと)になって両親にも孝養を尽くし、立派に子どもを育て上げたということでございます。
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