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さて、神様達が大勢集まりまして、一ヶ月にわたる長丁場ですから、真面目な話ばかりもしちゃいられません。なにしろ年に一度の再会ですから、積もる話も色々とある。
神様でも、やっぱり女は話し好きと見えまして、ひとりの女神様が、嬉しそうに話を始めます。
「ちょいと聞いて下さいな。近頃こんないいことがあったんですよ」
「おや、どうなさいました」
「毎日欠かさずお参りに来て下さる、そりゃあ信心深いご夫婦がありましてね、この間、とうとう歩印取が千点になりました」
「ホーッ、そちらの神社は、ポイント制なので?」
「最新式ですな」
「それは、一日一点なので?」
「いえ、十日で」
なかなか大変なことでございます。
「それで、特典として、お二人の夢枕に立ちましてねえ。あなた方の日頃の信心にめでて、願いを三つ聞き届けて差し上げましょう――」
「お待ちなさい。毎日お参りに来ていたんでしょ。願いの義は、分かっている筈じゃないんですか」
「いえ、遠慮深く慎ましやかなご夫婦でね。これまで一度も願い事をなさったことは無いんです」
「そりゃ信心じゃない。ただの散歩でしょう」
「散歩ですな」
「いいから、黙ってお聞きなさいってば。本当に欲の無い方達で――」
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