二番煎じ

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「無礼を申すではない。聞いて驚くな。我こそは、ここの主じゃ」 「何だ、宿無しか。ここはお前さんのねぐらというわけだな、悪かった。ま、雨が上がるまでのことだ。ちっとばかり宿らしてくんな」 「そうではない。わしはこの社の祭神。つまりは神様じゃ」 「ああ、貧乏神か」 「口の悪い男だね。まあ、もう、誰でもいいや……」 「なにぶつぶつ言ってやがる?」 「ええ、オホン。これから、わしが神である証拠を見せてやろう。その方の日頃の信心にめでて――」 「馬鹿言っちゃいけねえ。(おれ)ぁ信心てやつが、蛸と長虫(ながむし)(蛇)の次に(きれ)ぇよ。世の中に、神も仏もねえってことは、身に染みて知っているからな」 「それがおるのじゃによって、その方の願いを三つ聞き届けてつかわそう」 「ふぅん。どんな手妻だい」 「手妻などでは無いと申すに」 「どんな願いでも聞いてくれるのかい」 「うむ……ああ、いや、神と言えども出来ぬ事が三つある」 「三つもか」 「一つ、死んだ者を生き返らせることは出来ぬ。二つ、天命を著しく超えて寿命を延ばすことは出来ぬ。三つ、人を呪うことはならぬ。わしは、善なる神じゃによってな」
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