二番煎じ

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「ふぅん、そうかい。神様ったって、大したことはねえんだな。なるほどね。じゃあお前さん、ちょいとこう火ぃ貸してくんな」  と、煙管(きせる)を取り出します。 「……そんなことで良いのか?」 「何が」 「いや、だって……」 「いいからキリキリ出しゃぁがれ! おりゃあ今、煙草が吸いたくって仕方がねぇんだ!」 「分かった分かった――」  どうも、思っていたのと違います。  ほらよっとばかりに煙草に火が付きまして、男はスパスパーっと旨そうに一服吸い付けました。 「よし。これで頭が回るようになったぞ。それじゃあ、二つ目の願いだ。こういうことは、欲をかいちゃいけねえもんだ。取りあえず、十両ばかり出してもらおうかな」 「十両!」  十両と言えば、独り者が経済して暮らせば、一年がとこは楽に暮らせる金額なので。 「なんだよ。さっきみてぇに、ほらよっと出しゃいいだろう。ああ、言っておくが小判じゃだめだぜ。両替するのが面倒だ。通用銀で頼まあ」 「……むむ、致し方ない」  どうも、思っていたのとは相当違います。  しかし、考えてみれば、蔵いっぱいの財宝なんて言われかねまじきところ、随分慎ましやかな願いということも出来ましょう。  えいやっと十両、一分銀にいたしますと、ざっと四十枚という勘定で。 「おっと、これこれ」  男は、それが葉っぱで無いことを確認するように、手の上でチャリチャリ言わせて、 「よしよし。これで当分は安泰だぁな」  と、にこにこしている。
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