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1.
全く、つまらないことに巻き込まれた。
「そうだなあ、プロデュースはしてやってもいいけど、一度くらい寝てくれないと」
面の皮の厚いおっさんが言った、おっさんとは言ったが三十代と見受けるが、どうでもいい。
オールバックで肩にカーディガンなんかひっかけて、昭和のディレクターかってのよ。
「は?」
私は思い切り不機嫌に聞き返していた、隣にいた眼鏡をかけたスーツ姿のマネージャーが慌てて腰を上げる。
「戸隠さん、またそんな事をぉ……」
「まあまあ歌も上手かったし?」
まあまあ?
「俺がちょいと盛り上げてやれば、あっと言う間にトップシンガーの仲間入りよ。とりあえず一回でいいよ、お互い気に入りゃ何度でも」
何の話をしているのやら。
「お前さんの返答次第だな。いいんだよー、音楽プロデューサーなんて俺だけじゃ無いし」
てめえに、お前とか呼ばれたくない。
「そうですね」
私はできるだけぶっきらぼうに答えてやった。
「そういう事なら、お断りします」
「は?」
自称(じゃないけど)音楽プロデューサーと、マネージャーは声を揃えて目を剥いた。
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