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母(美津子)は戦後間もない北海道で生を受けました。大工の父、役所で働く母の4人姉妹の次女であり、堅実な絵に描いた様な優等生の姉と裏腹な、型破りな性格で、自分のやりたい事をやりたい。その為であれば何処まででも進んで行く。この時代には突飛な性格の娘であったのには間違いありません。
美津子が中学校を卒業する頃の日本は、高度成長期であり、中学校を卒業して働きに出る、いわゆる「金の卵」と言われていました。
姉は勿論高校に進学しましたが、美津子は
「東京に行きたい。自分で働いて生活したい。」
との意識が強く、親の反対を振り切り中学を卒業と同時に東京の大きなパン工場に就職を決め、1人上京して行きました。
初めての東京。初めての仕事。緊張してはいましたが、見る物見る事全てが目新しく、瞬く間に時は過ぎて行き、上京し3ヶ月が経った頃には同郷の彼氏も出来、仕事も楽しく日々を送っていました。
ちょうどその頃、工場の親睦会があり美津子も出席して楽しい時間を過ごしていたその時、遠くの席から
「俺はみっちゃんの事を好いとうばいっ!」
大きな声でこっちを向いて叫んでいる、若い男の人がおりました。
それが何を隠そう、私の父です。
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