第一章 会社にて

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「おはよう。」 「おはようございます。」 「おはよーっす。」  朝、出勤すると相変わらずの毎日が始まる。 毎日同じ電車の同じ車両に乗り最寄り駅から職場のある駅まで45分、私は本を読む時間に当てている。ほとんどの人が携帯の画面に集中し、ニュースを見たり友達とオンラインで話したりしている中、未だにアナログな私は印刷された活字を読むのが好きだ。 帰宅の電車は疲れていてあまり読まないので朝の通勤電車が私の唯一といっていい空想の時間になる。 駅に着くと栞を挟み現実の世界へ戻っていく。  もう社会人になり7年、一般事務職で就職した私にとって毎日の職場はただの惰性であり日々の糧を得るために通う場所だ。そこに何かを求めることもしないし期待されることもないこともわかっている。でもその毎日を過ごすだけで精一杯で新しい何かを始める気力もわかず、会社帰りに自己啓発で始めた英会話もストレス解消に通っているジムもここのところご無沙汰となり、ますます毎日を無為に過ごし何かを変えたいと思いつつも中々重い腰が上がらない。
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