第一章 会社にて

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「ありがとう。」 「それでちょっとお願いなんだけど俺これから外回り行かないといけないからこの見積やって欲しいんだけど。」 「賄賂先渡しなの。もう開けちゃったよ。そういうのは渡す前に言ってくれないと。」 「言ったら貰ってくれないし頼まれてもくれないかと思って」 「そうだよ。まあ時間があったらやっておく、時間なかったら缶コーヒー分だけやっておいて後は机に戻しておく。」 「いやいや、とりあえずよろしく。では行ってきます。」 言うが早いか早速出掛けていった。なにがとりあえずなんだ。本当に120円分だけやって戻してやろうかな。 また変化のない一日が始まっていく。ある程度忙しいほうが一日就業時間の終わるのが早くてよい。午前中は梁瀬に頼まれた見積もりを終わらせ、そうそう自分の仕事に取り掛かろうと思ったが思ったより不確定要素が大きく裏付を取るのに手間取り午前中いっぱいかかってしまった。これで缶コーヒー1本では割に合わない。今度食事でもおごってもらわないと。 昼は外に出ることにしている。会議室や机でお弁当を食べる人も多いが気分転換に外に食べに行くことにしている。中でいつもと同じ話題で愚痴ばかり聞いていられるほど私の精神は強くない。これが一人暮らしだったら金銭的にきつくなるのだろうが親元から通っているため昼外食するくらいはなんとかなるのでそれに甘えて大体一人で近くのお気に入りの定食屋に通う。洒落たレストランじゃないのがOLっぽくはないが毎日だとやはり和食中心になってくる。まわりはスーツ着たサラリーマンばかりで最初は入り辛かったが通ううちにこちらが思うほど誰も私を気にしていないことに気が付いてからはなんともなくなった。この日常自体に慣れてきてしまっている自分が嫌だ。いつからこんな自分になってしまったのだろう。
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