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(嘘よ。あの爽やかで、上品で、紳士な嶺倉さんが……よりによって、粗暴で、下品で、女好きのヒグマだったなんて)
ショックでめまいがしそうだった。
「騙したのね!」
「人聞きが悪いなあ」
責める私に、男……嶺倉さんは心外な顔をする。
「アロハの俺もスーツの俺も、嶺倉京史。その時々で使い分けてるだけだよ。ビジネスや見合いの席で、だらしない格好はできないだろ」
「でも、初めから名乗ってくれたらいいのに」
「名乗らなきゃ、君は見分けが付かないんだ」
「そ、それは……」
観察力が足りないと、彼は言いたいらしい。
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