三十路のお見合い

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(嘘よ。あの爽やかで、上品で、紳士な嶺倉さんが……よりによって、粗暴で、下品で、女好きのヒグマだったなんて) ショックでめまいがしそうだった。 「騙したのね!」 「人聞きが悪いなあ」 責める私に、男……嶺倉さんは心外な顔をする。 「アロハの俺もスーツの俺も、嶺倉京史。その時々で使い分けてるだけだよ。ビジネスや見合いの席で、だらしない格好はできないだろ」 「でも、初めから名乗ってくれたらいいのに」 「名乗らなきゃ、君は見分けが付かないんだ」 「そ、それは……」 観察力が足りないと、彼は言いたいらしい。

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