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青年は一度の重い沈黙の後、ようやっと口を開いてぽつり、と話す。
「…兄さんはね、いなくなったんだ」
「いなくなったっ!?って、どういうこと!?失踪ってこと?」
「う~ん……、なんて言うのかな…。人間のソレとは少し違うけれど、大方同じってところかな」
「それって一大事なんじゃ…っ!?」
慌てふためく私を尻目に、
「そんなに驚くことでもないよ。たまにあることだから…」
「え…?それは(せい)がよく行方不明になるっていうこと…?」
「…違う違う」
と苦笑する(ゆう)。
「僕たちは人間じゃない。それは前にも話したし、君も気づいているんでしょう?」
「…うん」
「僕たちの正体は…、…なんて言ったらいいかな…?妖精みたいな妖怪みたいな、取り敢えず、霊魂の塊なんだ」
「っ!?えっ、っと、…それは、つまり…お化けってこと…?」
「…まぁ、そのようなモノだね」
微笑む(ゆう)に引き攣りながら笑う私…。
「僕のこと、怖くなった?」
あまりに顔に出ていたのか本音を訊かれた…。
「…そっ、そんなこと、ないよ!」
…やばい。返答がしどろもどろになってしまった…。
「…ふふっ、顔に出てる(笑)分かりやすすぎだよ、悠亜ちゃん」
…なんだか不思議なことに、微笑む彼の表情を見ていたら、恐怖心は自然と何処かへといってしまった。
…暫くして。
「僕が久しぶりに君に会いに来たのは訳があって来たんだ」
「……?」
訝しむ私をよそに青年は話し始める。
「…本当はずっと君に会いに来たかった…。僕らも君と同じで幼かったから、友達なんていなくて、君と一緒に過ごす時間は本当に楽しかったよ。……でもね、」
急に明るく弾んだ声色にふっと影が落ちた。
「君には会ってはいけないって言われて急に会えなくなったんだ。君も僕たちのことを急に忘れて、また、急に思い出して変だと思わなかった?」
…そうだ、確かに変だった。急に・唐突に、<忘れて>しまったんだもの…。
「実は君にもね、記憶操作の術がかけられていたんだ。僕たちに出会ったのを忘れる為に…。<夢のあの女の人>も暫く出て来なかったでしょう?」
「っ!?どうしてそれを…っ!?」
「君の夢にいつも現れる彼女は君の根幹・ルーツなんだ」
「…ルーツ?どういうこと?何故貴方がそれを知っているの…?」
私は困惑した。
「彼女は君の前世。君が不思議な体験をするのも全て彼女の所為なんだ」
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