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彼が言い放った言葉はすごく…、すごく、私に重く圧し掛かってきた。
私は幼い頃から一般人には有り得ない、不思議な体験を沢山してきた。
それはほのぼの・ほんわかするものから怖いもの迄。
…だから、彼が言う<私の前世の女の人が全ての始まり>という言葉も少しは理解が出来るし、信憑性もある。私が信じ込み易い馬鹿だっていうのも勿論あるんだけどね。
…だけども、
どうしてそれを彼が知っているのだろうか?
彼は自身のことを自分もまだ幼いと言っていた。
だのに、知っているだなんて、私の前世の人は相当な有名人なの??
それとも嘘か?
恐る恐る、彼(ゆう)に尋ねてみることにする。
だって、訊ける人は彼しかいないのだから。
「私は幼い頃から沢山の不思議な体験をしてきたから、その手の話を聞いても驚かないつもりでいる。訊ける相手は貴方しかいないの。教えて、夢の中の女の人について!どうして知っているのか…」
私は最早、懇願するような縋るような思いで尋ねた。
すると彼は少し嘆息し答えた…。
「彼女<悠亜の夢に出てくる女性>はね、それは本当に高名で有名な方だったんだ。僕なんぞでも知っている程に、ね…。彼女は誰にでも分け隔てなく優しかった。だから、誰彼からも好かれたんだ。…でも、そんな態度だったからこそ、歪んだ好意を寄せる者も多くて彼女は長生き出来なかった。殺されたんだ…。これは僕たちの間では有名なハナシ」
と私の心境を見透かしたような態度だった。…流石、人間とは別のイキモノ。
心理を読むのなんて簡単にするのね。
私は黙って静かに彼の話を聞いていた。
「僕たち夢現のモノでもね、輪廻転生は出来るらしくてね、彼女の生まれ変わりが君、悠亜ちゃんという訳だ。君の特異体質はきっと彼女の生まれ変わりだからこそ発現している筈…。だから、彼女は夢の中でいつも君に<私の所為で不遇な思いをさせてしまいごめんね…>って謝っているんだよ」
静かに彼(ゆう)の話を聞き終わった私は何とも言えない気持ちになった。
夢の中の彼女は悪くない。寧ろ被害者だ。…それなのに、私を案じて謝ってくれている…。
話のあらましを聞いて、私は今後、どうすべきなのか?
何処までが本当の話で、何処が嘘なのか…暫くの程、思案したのであった。
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