第三章 レッドドラゴン討伐

1/87
1589人が本棚に入れています
本棚に追加
/1965ページ

第三章 レッドドラゴン討伐

             第22話 たった一人の冒険者  レッドドラゴン討伐の為に、街から1人を残して戦闘職の冒険者が全員行ってしまった街。それが今のハバルの現状だった。  日頃依頼を出している人間からしてみれば堪ったものではなかったが、もしもレッドドラゴンが討伐されれば、素材は全てこの街の利益として反映されることになっている。それを思えば、今のこの状況も耐えらえると大勢の一般人は思っていた。  しかし、商人や鍛冶師は違う。街から出るには、必ず冒険者を雇う必要があるというのに、その冒険者が居ない。よって荷を待っている人達へ届けることも出来ない。もっと言えば稼ぎに行けないのだ。  来る時に雇った冒険者は、往復で雇っているなら良いが、そうではない場合即座に他の商人との競売になってしまう。ギルドの依頼書には護衛の依頼で満杯になっているので、冒険者達もいざこざを恐れて誰も受けようとはしないし、すぐ街を出て自分達が拠点としている街へ帰ってしまう。  そして職人達も困っていた。物作りの為の素材はやってくるが、それを街の外に出せないのだ。だから当然収入は0になる。鍛冶師なんて、買いに来る客や補修を頼みに来る客が全員レッドドラゴン退治に行ってしまったのだから、この1ヶ月のことを考えたら途方に暮れそうだった。  そんな中、1つの光が現れた。現在この街に残っているたった一人の少女の冒険者である。曰く少女は冒険者になったばかりだが、80人の商人達を一度に護衛し、100匹近い魔物に襲われても見事無傷で隣町まで運んだという実績があった。その80人のほとんどはこの街か近隣の村出身の為、すぐに話は街中に広がり、浸透していく。  実際に何人かの商人が依頼を出してみると、冒険者ギルドから回答があった。 『行き先が同じで隣町までなら、同時に受けることが可能である』と。
/1965ページ

最初のコメントを投稿しよう!