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本屋
どこの町にも、必要とされているのかいないのか、それでもつぶれていない老舗の本屋というのがあるものだ。
学校でまったく必要とされていないボクは、だから、親近感を覚えたというわけではないが、よく帰宅時に立ち寄るようにしていた。
隣で唯一の友人といっていい、カナタがしゃべる。
「しかし、悲しいよな。何が悲しくて、男二人で本屋なんかに……」
「いいじゃないか、これもまた青春だ」
高校生になったからといって、何か特段期待しているわけではなかった。
暁明(あかつきみょう)。
それがボクにつけられた、15年間の人生を彩った名前だ。
中学でも友人らしいものがいなかったボクのこと。いくら「明」なんて名前がついていようと、突然輝ける人生が送れるわけでもない。
夕焼けが坂道を紅く染めている。
ボクらの影を飲み込んでいく。
下りきった道の終わりに、その本屋はあった。
そしてそれが、左良井アラカとの出会いだった。
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