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女の人の口から語られたのは、普通は信じることの出来ない、突飛なものだった。
いきなりファンタジーの世界に迷い込んでしまったみたいだ。
謎の女『どんな表現ならいいかしら…そうね、異能力とか、超能力者とか、きいたことない?魔女、とかね』
こよみ『フィクションならば』
よく題材にされるものだ。知らない、とは言えない。
謎の女『フィクションじゃないわ。現実よ。私がそうだし…こよみ、あなたも身をもって知っているはずだわ』
目が合う。
女の人は穏やかに笑っているはずなのに、その目はなぜか鋭くて、冷たく光っていたような気がした。
ゾワリ、背筋に寒気が走る。
確かに知っている。こよみ自身がそうだから。
幼い頃から、こよりは他人の心の声が聞こえていた。
当時、それは普通の声と区別がつかず、他の人には聞こえていないものだということを知らなかった。
よみがえる。幼い頃の記憶がむしばんでいく。
当然ながら、周りの人は気味悪がり、離れていった。
大人たちは、偽りの笑顔で。
子供たちは、無邪気な恐怖で。
それらは、こよみの心を容赦なく傷つけた。
いくら耳をふさいだって、心の声は聞こえてくる。音ではないのだから当たり前だ。
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