第4章 探索

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 まず左進し、司令室(ブリッジ)へ向かった。  僕の移動に合わせて周囲の明度が変化する。半円形の司令室内も、長い眠りから覚めた。  室内中央、床面より1mほど高い位置に船長の司令席がある。その左側に副船長席、更に床面左右に1席ずつ操縦席がある。左側がマキネン君、右側が僕の席だ。  司令室内は4席、通常は交代制で勤務する。ドクターは医務室に常駐し、ラッセルさんはノア後部の機関室が仕事場だ。  自分の操縦席に座り、タッチパネルを操作する。航行記録にアクセスしてみたものの、異常はない。ノアは順調に超光速航行中だ。現在の位置は、ノアまで約0.3光年、到着までおよそ30日の距離――全くの予定通りである。  ブリッジの正面に、外部情報を映し出すスクリーンが設置されている。通常航行では、星の海が果てなく広がり、心奪われるほど美しいが、超光速航行中は灰色一色でつまらない。しばらく見上げていたが、一息吐いてブリッジを後にした。  通路を戻る。個室は手前から、通路の左側にマキネン君、僕、クロエ副船長の順に並ぶ。通路の右側、マキネン君の斜め向かいにはラッセルさん、ドクター、スチュワート船長の個室がある。  他人の個室に踏み込むのは躊躇われるが、僕の置かれた現状を天秤にかけると、不躾な振る舞いも理解してもらえるはずだ……多分。  マキネン君の個室のドアを――何となくノックした。もちろん、気持ちの問題だ。未だコクーンの中なら、外界の音はシャットアウトされている。ノックなど聞こるはずもない。 「ごめん、お邪魔しま――マキネンっ!?」  シューッ、と気圧が変わり、微かに鼓膜がツンとした。だが、そんな肉体的変化になど構っていられない。明らかな異変に気付き、彼のコクーンに駆け寄る。 「おいっ! マキネン? まさか――」  コクーン外装に点るランプが、赤い。何らかの異常が発生したことを告げるサインだ。 「まさか……嘘だろ……」  手足が震えている。それでも、確認しなくてはという激しい気持ちに突き動かされて、彼のコクーンシステムを強制解除する。  赤いランプと共にブート音が発せられるはずだが、その機能は停止している。すなわち、異常事態が相当前に発生したことを意味している。
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