第4章 探索

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 強制解除は、指令を受けても5分待たねばならない。指先が冷えていく……息が詰まる――。 『強制解除、完了。正常(・・)ニ停止シマシタ。システムヲ終了シマス』  コクーンに組み込まれた音声システムが、無機質な女性の声で宣言した。次いでフシューと低い音を立てながら、観音開きに蓋が開いていく。 「――う……」  枯れた古井戸の底に滞留した空気が含む湿っぽさと、有機物が経年変化して発する、()えたような異臭が鼻腔を貫く。  それでも、コクーンの縁に掛けた両手を離せない。 「マキネン……どうして――」  呟く声が詰まる。  若いエネルギーに満ちていた少年は、見る影もなく老いていた。老人、というには余りにも劣化が進み――いつか博物館で見たミイラに近い。  そばかす顔の肌は、すっかり土気色になり、栗毛色の頭髪は、藁屑の如く疎らに貼り付いている。一部は完全に色素が抜けている。  あの鳶色の瞳は、きっと凝縮してしまったに違いない。落ち窪んだ眼窩の中に、眼球らしき膨らみはない。  専用スーツの中身は、骨格が分かるほど凹凸が極端になっている。自家融解により、蛋白質が分解されたに違いない。 「……28歳、なるはず、だった……じゃ、なかった、のかよ……」  涙で視界が滲む。可哀想という気持ちと、何故という疑問と、何よりも悔しくて堪らない。  ドクターなら、詳しい死因が分かるだろう。彼が苦しまずに逝ったのかどうかも、きっと分かるはずだ。  コクーンシステムに精通した船長やラッセルさんなら、残されたデータから原因を突き止められるに違いない。  どちらも門外漢の僕は、ただ嘆き、手を合わせることしかできない――それが、悔しくて堪らなかった。
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