2人が本棚に入れています
本棚に追加
日が沈みかけて、夕暮れが来て、そして真っ暗な夜になる。
町にあふれていた『一般人』は、蜘蛛の子を散らすように帰ってゆく。仕事が残っているかもしれないサラリーマンも、部活に明け暮れたいはずの学生も、犬の散歩に出ていた老人も、皆、家に帰る。
それでいいのだ、と私は思う。いつまでも外に居れば、マフィアのいざこざに巻き込まれてしまう。
ボスは『一般人』のことなんて何も考えていない。組織をもっともっと大きくすることしか頭にないのだ。
『―――リ。作戦開始だ』
耳に差したイヤホンからボスの声。
「了解」
それだけ呟くと、私は夜の街へと歩き出した。
私は、『イケニエ』。
私自身を餌として、敵対する組織の者を呼び寄せる。
独りぼっちで街を歩く私は、格好の獲物。
そして、のこのこと出てきた者をーーー
パシュ ズドン
血に染める。
これが、私の日常。
最初のコメントを投稿しよう!