第2章

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「お義父さん、おはようございます」 「おお、かなちゃんおはよう。今日も手伝ってもらっちゃって悪いね」 「いいえ」 旦那が修練に行ってから二週間経った。私は、仕事を少なめのシフトに変えてもらい、お寺の手伝いに来るようになった。 「光道様、これはどちらに運べば?」 「ああ、いいんですよ。私たちがやりますから」 「いいえ、光定様がご不在で大変でしょうから、私にも手伝わせて下さい」 「すみません、ありがとうございます」 そして、旦那が修練に行って一ヶ月不在だと知った信徒さんたちの何人かが、お寺のお手伝いをしに来てくれるようになった。これも布施の一つだといい、お金を受け取らない信徒さん達にお茶をご馳走したりしていた。 「ふふ、こうやってお寺のお手伝いをさせていただけるなんて、なんて有難い事でしょう。恐れ多いですが、ご住職のお嫁さんになる方は、大層お幸せでしょうね。因みに、光定様のご縁談のお話はおありなんですか?」 「光定は、もう結婚しているのですよ」 「ええ!そうなんですか?いつもお二人でお寺のやりくりをしてらっしゃるから、またご結婚されていないものと...」 「小さな寺ですし、私達の他にも修練としてうちの手伝いに来るもの達もいます。それで寺の事は十分事足りるのですよ」 「まぁ、そうなのですか。でも、私がご住職の嫁になる機会がありましたら、お寺に入り、皆様が快適にお仕事や生活ができるよう、おそばで支えたいと思いますのに」 「ふふ、ありがとうございます」 このようなやり取りを聞くのも、初めてではない。でも、信徒さん達の言う事は正しいので、私はその言葉をただただ受け止めていた。どうせ、旦那はそろそろ私に離婚を切り出すだろうから、信徒さん達が心配するのも後少しだろう。私は、そう自分に言い聞かせながら、作業を継続した。 「あの、あなたが奏さんですか?少し、お話があるのですが、お時間頂いてもよろしいでしょうか」 「え。あ、はい」 そんな中、綺麗な顔をした信徒さんの一人に呼び止められた。そして、なぜかその後お昼をその人と食べる約束をした。
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