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「お義父さん、本を借りても良いですか?」
「じぃじ!」
「おー、ゆいちゃんかい。今日も元気だねー。あ、そうだ。ゆいちゃんのために新しい絵本を用意したんだよ。かなちゃんに読んでもらいなさい」
「はーい!」
「お義父さんありがとうございます」
「ふふふ、時間ができたら私もかちゃんの絵本聞きに行くよ」
「え、それは」
「光定には内緒だよ」
「はーい!」
「ゆいちゃん...」
いつものようにお義父さんに絵本を借りた。お義父さんがまたそんな冗談をいい、何故かゆいちゃんが返事をしていた。それに対しお義父さんは優しい笑顔で笑いながらお勤めに戻っていった。
「今日のお話はラッコの兄弟のお話だって」
「らっこー!」
「らっこ可愛いよね、私も好き」
「すきー!」
さすがお義父さん。良い趣味をしていらっしゃる。というか、ゆいちゃんのためといいながら、私のためにこの本を選んでくれたのかもしれない。
心の中でお義父さんに感謝をしながら、本を読み始める。私の下手くそな読み聞かせにも、ゆいちゃんは嬉しそうに反応してくれる。すると、ゆいちゃんの楽しそうな声に惹かれ、何人かの子供達も集まって来て、ちょっとした小さな輪が出来た。まだ子供達の扱いに慣れていない私は、少し緊張したが、子供達の楽しそうな顔をみていたら、そんな緊張はいつのまにか忘れていた。
「おしまい」
「えー!次の本はー?」
「んー、今日はおしまいにしよう。お母さん達もそろそろ呼びに来ると思うよ」
「えー」
「何かお気に入りの本があったら持っておいで。来週もこのぐらいの時間にいるから」
「ほんと?ママに聞いてみる!」
「はなもいーの?」
「はなちゃんもいーよ」
「わーい!」
「あ、ママだー!かなちゃんバイバーイ!」
「うん、バイバイ」
そんな感じで、少しずつ集まっていた子達もママの所へ帰って行く。ゆいちゃんはいつのまにか寝てしまった。寝ながら私にしがみつき、私の髪をいじっている。寝てしまったゆいちゃんを抱き上げ、絵本を返しに行こうと立ち上がると、ゆいちゃんのお婆さんとお義父さんがこちらに向かって歩いて来るのが見えた。
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