新しい一歩

5/11

825人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
「奏、ただいま」 「おかえり」 あれから数日たった。そして今日、私は光定さんを家に出迎えた。光定さんは、今日は近所のお寺のお手伝いに行っていたみたいだ。 結婚して一年。子供を産んでもおかしくない時期。けれど、母親なるには私だけの力では無理。光定さんの協力が必要だ。私が母親になるということは、光定さんが父親になるという事。子供が生まれればこれまでの生き方を全く帰る事になってしまうかもしれない。やはり、一度光定さんに相談しないとと思っていた。 「奏から家に来ててって言われるの、初めてかもね」 「そうかな」 「うん、そうだよ」 そういう光定さんは、なぜか機嫌が良さそうだった。話をするのであれば、今日しかないと思った。 「光定さんに、相談したい事があって」 「ん?なに?」 私の話を聞きながら、部屋着に着替える光定さん。少し目のやり場に困りながら、テレビの前のテーブルの前に私は座った。すると、光定さんもテーブルの前に座ってくれた。 「光定さんは、子供好きだよね」 「うん、好きだよ。でも、俺兄弟いないから、奏みたいに姪っ子とかいないし、子供と触れ合えるのは子供達がお寺に遊びに来てくれる時だけだから、まだ少し緊張するんだよね」 そういいながら笑う光定さん。光定さんの言葉に、私と一緒だと喜ぶ気持ちもあるが、それはつまりどういう意味だろうと深読みしてしまう。光定さんは子供が欲しいとはまだ思わないのだろうか。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

825人が本棚に入れています
本棚に追加