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「光定さん」
「ん?」
「どうしよう。間違えた」
「そうだよね」
緊張のあまり言葉の選択を間違えてしまった。私はまた深呼吸をした。
「光定さん、お父さんになりませんか?」
「え?」
どうしてだろう。うまくいえない。相談したいのに、話し合いたいのに。私はうまくいえない私が嫌になり机に顔を突っ伏した。
「もしかして、奏。子供が欲しいの?」
すると、光定さんが、そんな私の頭を優しく撫でながらそう言ってきた。さすが私の旦那様。
私は顔を上げ、光定さんをみてから静かにうなづいた。しかし、気持ちが伝わったら伝わったで、光定さんがどんな反応をするのかが怖くて、私は再び顔を伏せた。
「そっか、奏がお母さんかぁ」
光定そんは私の頭を撫でながら小さく呟いた。でも、声だけでは光定さんがどんな気持ちでそう言ってるのか分からず、私は少し顔をずらし、光定さんの事を盗み見...ようとしたのだが、光定さんと目が合ってしまった。
「なに?俺がなんていうか心配?」
そんな私を見て、光定さんはなぜか目を細めて笑いながらそう聞いてきた。全くもってその通りだったので、私は静かにうなづいた。
「奏、おいで」
すると、光定さんが私の頭から手を離し、両手を広げてそう言ってきた。私は少し戸惑ったが、折角の光定さんのお誘いだったため、ゆっくり立ち上がって、静かに光定さんの腕の中に収まった。
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