新しい一歩

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「奏がお母さんになりたいなんて、言ってくれる日が来るとは思わなかったなぁ」 「私も」 「そうだね。昔の奏に今の奏を見せてあげたいな」 「ん」 光定さんは私の頭をまた撫でながら、機嫌が良さそうにそう話し出した。 「俺、お父さんになれるかな」 「光定さんは、子供欲しくない?」 「ううん、もちろん欲しいよ。奏と夫婦になった日から、いつか奏との間に子供が出来たらいいなって思ってたから」 「ほんと?」 「ほんと。でも、俺まだまだ未熟者だし、修行中だし、そんな中途半端なオレが父親になれるかなって、不安はあるかな」 「光定さんも?」 「もちろん。でも、俺に限らず親になる時不安が全くない人なんていないだろうけどね」 「うん」 光定さんの素直な言葉に、あんなに緊張していたのが嘘みたいに、ふわふわと心が落ち着いてきた。たぶん、光定さんがずっと頭を撫でてくれてるおかげもあると思う。 光定さんのお陰でうとうとしていると、光定さんが頭を撫でるのをやめて、少し強めに私を抱き締めてきた。 「けど、欲を言うと、もう少し奏と2人でいたい、かな。2人でどこか行ったり、一緒にご飯食べながら何でもない話をしたり、そう言う時間をもう少し、味わいたいかな」 そして光定さんが、少し小さな声で恥ずかしそうにそう言ってきた。今までせっかくリラックスしていたのに、光定さんのせいで、体中が熱くなった。私は何も言えず、ただただ光定さんをぎゅと抱き締め返した。 「あと、子作りをするためには、その前の段階も、色々とあるわけで」 しばらく無言でなぜか抱き合っていた私達だったが、光定さんが言いづらそうにしながら口を開いた。 「いろいろ」 「うん、まぁ、いろいろ」 私もそう言う経験が全く無いわけでは無いが、光定さんとはあまりそう言う雰囲気に無かったことがなかったため、今までそのいろいろをしてこなかった。それに、色欲である事もさることながら、今まで光定さんに釣り合うような綺麗で可愛い人達と付き合ってきただろうから、私といろいろするのは、嫌なんじゃないかと思っていた。 「光定さんは、嫌じゃない?いろいろするの」 「まったく」 思い切って聞いてみたら、即答で返事が来た。
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