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「私、いろいろするの、あんまり得意じゃない」
「うん」
「けど、嫌なわけじゃないし、興味が無いわけじゃない」
「うん」
「ハグは最近、好き。気持ちいい」
「最近呼んだら来るもんね」
「人を犬みたいに言わないで」
「奏は犬というより猫かな」
少し慣れない会話をして変に緊張してしまったが、普段の調子を取り戻してきた。調子に乗った私は光定さんの首筋に鼻を擦り付けてみた。少し光定さんの体がぴくりと動いたが、それだけで、別に拒否の言葉は聞かれなかった。首筋からは光定さんの匂いがして、何故だか少し体が熱くなった気がした。
「あの」
「ん、なに?」
少し首を伸ばして、光定さんの形のいい耳元に口を寄せる。気のせいか、少し光定さんの声も熱っぽく掠れている気がした。
「キス、してみても、いいですか」
思い切って、欲のままにそう言ってみた。
「なんで敬語なの」
少し笑いながらそういう光定さん。光定さんの耳と首筋の色が少し赤く染まった気がする。その後、どうぞと、光定さんからお許しが出た。
「目は、つむってて」
「わかった」
「少しも動かないで」
「え」
「出来れば息もしないで」
「俺死んじゃうよ」
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