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そんなことを言いながら、光定さんは目をつむってくれた。私はぴったりくっつけていた体を光定さんから離し、光定さんの顔を観察する。目をつむってもムカつくくらい綺麗な顔をしている。なぜか頬をつねりたくなったが、我慢をして、私は光定さんの口元に、ゆっくりと手を添えた。人差し指で唇をなぞるみたいにして触ってみた。
「ふふ、くすぐったいよ」
「動いた」
「ごめんなさい」
私はゆっくりと光定さんに近づく。そして、形のいいその唇に、触れるか触れないかで私の唇を近づける。私も目をつむっているため、いつその唇に触れるか分からなかない。その後、ふわっと、唇に慣れない感触がして私はびっくりして、一度触れたものから離れてしまった。ゆっくり目を開けると、光定さんはまだ動かず待ってくれている。私は再び光定さんに近づいた。今度はあの感触がしても離れたくなるのを我慢した。でも、数秒すると息が続かなくなって、ゆっくりと離れて大きく息を吸うと、そのまま光定さんの胸元に顔を埋めて、強めに抱き着いた。しばらくすると、光定さんも私の体を包んでくれて抱き締めてくれた。
「終わりですか?」
私は胸元に顔を埋めたまま、うなづく。
「どうだった?」
そんな恥ずかしいことをきいてくる光定さんに、無言で頭をぐりぐりとさすりつけた。すると光定さんは笑いながら、ごめんごめんと謝った。
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