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「あなたが噂のイケメンなお坊さんですね!今日は密着取材をさせていただきます!よろしくお願いします!」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
それから数ヶ月たち、うちに取材が来た。取材の中心は父さんではなく、俺。父さんを差し置いて、俺が取材を受けるなんて乗り気では無かったが、父さんはいい機会だから受けてみなさいと言ってくれた。なんとか取材を終えて、その雑誌が販売されるようになると、うちにくる人達が増えた。新しくくる人達は年齢が若い女性が多かった。
「わぁ、本当にイケメン!凄く優しいし、素敵!」
「光定様は、説法されないんですか?是非聞きたいです!」
「私はただここの手伝いをさせて頂いているだけなので」
「えー、残念です」
やはり、うちに来てくれる人が増えるのは嬉しい。しかし、新しく来てくれる人達は、父さんではなく俺に声をかけてくる。嬉しい反面、信徒さん達が父さんの説法を穏やかに聴いてくれていた昔の光景が懐かしかった。
「光定、そろそろお前も説法してみないか?」
「え、俺が?」
「ああ、私は今のお前であれば、みんなの前で説法する事が出来ると思うんだ」
「いや、でも。俺なんかに...」
「お前は、やりたくないのかい?」
「え?」
「お前がやりたくないのであれば、無理強いはしないよ」
夕飯を食べていると、父さんからそう提案された。まだ俺は正直、自信がなかった。最近、積極的に修練に励むようになったら尚更、おれはまだまだだと思うようになった。けど、父さんのようになるには、説法する事が出来なければ話にならない。今、この機会を逃してしまったら、次に説法する事がまだ出来るタイミングばいつになるか。
「やるよ、父さん」
「ああ、分かった。じゃあ、一週間やるから準備をしておきなさい」
「はい」
俺は、父さんがくれたチャンスに挑んでみることにした。
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